Lesson#227;殺人事件と殺人事件と殺人事件と。―They are not serial

 こんなにも簡単に死んじまうとは思っても見なかったよ。お前のような人間だから、しぶとくいつまでも喘いだり、がたがた震えたり、痙攣しながら死んでいくんだろうと思ってたけど、神様って言うのは存外、慈悲深いもんなのかもな。お前見たいなのを、大して苦しめもせずに死なせちまうんだから。まぁでも、お前みたいなやつは御許に召されるなんてことは無いだろうから、ささっと地獄のほうにやられっちまったんだろうな。そんなら合点もいくってもんだ。当然俺もいつかは地獄行きだが、こんだけついてねぇ俺のことだ、そこで都合よくお前の苦しむ様を見れるかどうかもわかんねぇから、もうちっとこの世で苦しんでほしかったな、俺の前で。先に逝ったやつらとよろしくやるこったな。笑顔じゃ迎えてくれんだろうがな。いや、笑顔かも知れんなぁ。やっとこお前が来たんだ。みんな金棒やらもってお前のことを、針山に追い立てて登らせたり、ぐつぐつに煮えたなべの中にぶち込む時の楽しみを想像して満面の笑みかも知れんな。何より達者にやってくれよ、俺がそっちに行くまで。そんとき、運がよけりゃ俺もみんなと一緒にお前のこといたぶってやるからよ。
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「ここで眉を顰めるなんてなんて無礼なの。マナー違反もはなはだしいわ。」
「知ってるよ。そうは言っても彼の今の話の中身じゃあ、しょうがないじゃないか。聞いたろ?あんなこと口からでまかせで、彼にあんなことできるわけ無いじゃないか。なのにみんな、だまされてるよ。」
「そうでしょうか?そういう風に言うからには彼には不可能だとするような理由がおありなんでしょう?」
「あんたは黙ってろ!そんなに聞きたきゃ教えてやる。俺は小学校の頃から奴と一緒なんだ!万事が万事、やつはあの調子だったよ。いつも大風呂敷で、他人を巻き込んでは途中で飽きて投げ出して、結局最後は周りのやつがケツ持つ羽目になるんだよ。」
「でも中には成功したものも有ってよ。」
「そりゃ、そうだよ。でもやつがすごいんじゃない、周りの連中の努力が無けりゃ、あそこまではなんなかったんだよ。だからやつばかりがワーキャーと騒がれるのは間違ってるんだよ。ところであんた誰だ?」
「今回の彼の、まぁ、スポンサーですわ。」
「あんた、今に痛い目見るぞ。」
「なに騒いでるんだ?」
「あら、先生。」
「へっ、何が先生だ!」
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体中をフナ虫が這い回っている。
きっと気持ちが悪いだろうな、生きていたら。
でも死んでしまったら、そんなこと気にならないんだろう。
体の上をフナ虫が這いまわるのと、死ぬのどっちか選べといわれれば、やはり前者だろう。
フナ虫の学名はLigia exoticaと言うらしい。
どうやらエキゾチックな、ご様子。
いまさらフナ虫がエキゾチックだ、どうだと言っても仕方が無いだろう。
このホトケさんにとって。