Lesson#224;ヨレヨレのシャツの分だけの幸せ。

「あの〜・・・」
「あ、いらっしゃいませ。」
「花束をひとつ、お願いしたいんですけど。」
「ご贈答用ですか?それとも・・・」
「え〜っと、友人の誕生祝なんです。」
「そうですか。どのようにいたしましょう?ご予算や、ご友人の好みなどございましたらお伺いしたいのですが。」
「そうですね、2000円くらいでお願いします。う〜ん、好みって言うかちょっと暗い感じのやつなんで、こうぱぁっと明るくなる感じで。」
「はい、かしこまりました。」
「お願いします。」
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「ねぇ、やっぱり、悪いんだけどさ、ちょっと、先に見てきてくれない?」
「はいはい。」
「ごめんね。」
「まぁ、多分こんなことになるとは思ってたけどね。」
「ほんとにゴメン。」
車から降りて横断歩道を探したけど、遠くに歩道橋が見えるだけだったからメンドクサい、どうせ行きかう車も少ないし、とサッサッと向こう側へ渡る。車道と一段高くなった歩道の間には白いパイプの柵がある。車を降りたときは直接車道に下りたから気がつかなかったけど。これも見渡しても切れ目が無い。こんな往来の少ないところでこんなもんなんの役に立つのか、スカートで来るんじゃなかったな、ガッと柵の低い方の横棒に足をかけ、エイヤっと乗り越える。
 目的の店の手前まで来て、車を振りかけるとあいつはハンドルに額を当てて突っ伏していた。ちぇっ、そんなんでこれからあたしと、どうやってくんだよ。店の中をのぞくと、それほど繁盛していないのだろうか、中の空気が淀んで見えた。
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わナンバーの車で、助手席には窓から外を見やる彼女、プロポーズもしたし、OKの返事ももらった、世間一般から見たら幸福そうなドライブも、気が重い。徐々に彼女との会話も鈍くなってきて、「ああ」とか「うん」とか、僕が彼女の問いかけに相槌を打つだけになってきた。目的地に近づくにつれて。
「大丈夫?運転変わろうか?」
「いや、大丈夫。そこまで具合悪くは無いから。」