Lesson#188;ハードコア・ベイジン・スタイル・クイジン

彼は財布から一枚の紙切れを取り出す。そこには宝飾品で有名なある有名ブランドのロゴ。きっと今時分、男の持つそれは取り置きもしくは注文した品の引換券か何かだろう。もしかするとネームでも入れたリングでも贈るのだろうか?それはペアかもしれない。
その紙―ピンク色である―を見るとき―後ろからだったので見えなかったのだが―どんな顔つきだったのだろうか?わざわざ取り出して眺めるくらいである。笑顔だったに違いない。などと言うのはあまりにもつまらない。ため息交じりである、とするのが何とも言えない雰囲気があって、彼にはあっているような気がする。
恋人達のクリスマスが本当にロマンティックであるためにはその日以前のちょっとした憂鬱が必要でしょう。ちょっとした苦味があるからこそ甘味が引き立つと言うもの。そうでなければカラメルなど(食すもので焦げた部位があれば癌を誘発すると言った迷信めいた言われを信じている訳ではないのですが)そんなに意味は無いのではないか、と思えてきます。
一人でクリスマスを過ごされる方―ああ、同志よ!私も幸か不幸か今年は恋人なしのクリスマスでしょう。あと二週間のうちに劇的な恋をしなければ―におかれてはそんな苦味は贅沢である、コーヒーを飲んで見なさい、ブラックで。嗜好品とはこんなにも苦いのだ。そして必ずしも体に良い訳では無い。素直に滋養になるもの―それは精力を増進させる健康的セックスなのかしらん?―だけを摂取すればよろしい。と、ご指摘されるのでしょうか。しかし恋人達はよりロマンティックに居ることを、ロマンティックに過ごす機会を重ねればそれだけ、遅延―ある種のテクニシャンが前戯によってオルガスムの瞬間をより引き伸ばすのと同様―の術に長け、ロマンティックな空気も深まると言うものです。つまりは優雅なのですね。いやはや羨ましい。

こんなわかった風に恋人達を父性的な目で見るのはひがみ、老成を装った幼児的攻撃性の表れだ、我ながら悲しい限り。僕の恋愛はいつもライトテイストで、カオス、バイオレンスなんかはアンタッチャブルな訳で恋愛についてはハードコアなユーザーではないのですけど