Lesson#162;実験とは、要するにそういうことだったのである。

 昨今は女性の社会進出も目覚ましく…などと言うフレーズは前世紀のもので『何をいまさら』と言われそうですが、え〜、その社会進出を影から支えたものに関しては一向に顧みられていないのではないか?と思えてならないのですね、最近個人的に。急先鋒と目される女性政治家などばかりがTV画面、誌上をにぎわす。これはいかにも男性社会が女性運動の上層しか捉えきれていないに過ぎないのだ、と。
 女性の社会進出を可能にしたものは、冷凍食品であり、電子レンジであり、全自動洗濯機であり、掃除機であり、TVであり、生理用品(と生理痛緩和剤)であり、ピル(もしくはコンドーム等の避妊具)であった。と、私は思います。
 前近代的には女性はきつくきつく“家庭”に縛り付けられていました。彼女らの担当する家事業は半端無くキツイ、肉体的にも精神的にも。それは彼女らを疲弊させ家庭内に囲い込むに十分であった、と推察されます。そこから彼女らを解放したのは家事に使用される道具の改良であり、職場の女性比や女性議員の数、と言ったものはこの家事用具の発展史と強い相関関係があると言えるでしょう。炊事・洗濯・掃除における時間・手間は大きく縮小され、その分新聞の政治面へ目を通す時間、外的労働に費やす時間が増加した(家事の時間手間は社会進出と逆相関ですね)。
 また育児においても、女性に要求されるものは過大であったと思われます。『目が離せなくて…』と言うのも乳幼児相手では詮無き事。単純に子供たちの身の安全の確保と言う名目とともに、彼らに“かまう”必要が存在したことも鑑みなければいけません。そこでTVが大活躍、となります。ここにおけるNHKの果たした役割は非常に重要です。そしてこの点においてTV同様、マンガ文化も間接的に女性を手助けしました。また安全面に関しマンション化→鍵っ子の登場と言う流れも忘れてはいけないでしょう。
 そして女性特有の現象である生理・月経に関わる種々の煩わしさが軽減されたことも(男性が捉える)“女性的なもの”からの解放の一助であったと思われます。生理用品の機能向上、生理痛の緩和、PMSへの対処法…これらはかなりオープン、イージーアクセスなものとなってきました。生理用品など過去は薬局でコソコソと人目を気にしながら購入しなければいけなかった、なんて状況から考えればものすごい躍進です。
 最後にピル(とコンドーム等避妊に関わるもの一般)。前近代的な“幸せな結婚、家庭生活”にとって不可避であった妊娠出産は『授かりもの』の一言に表されているようにコントロール不可なものとして扱われてきました。それがコントロールできる(ネガティブな方向にのみ可能。と言う一方的なコントロールですが)。またこれはセックスと妊娠の非直結ですから、セックスも女性にとって敷居の低いものとなり、性的にも彼女達が開放的になったと思われます。
 女性の社会進出など今世紀ではもはやスタンダード。特筆すべきことでは無くなるでしょう。と言うかそうあるべきなのでしょうが、その下地を営々と作り上げてきたものが何であったのか?と言うところには、男性的視点からはあまり深い考察がなされない。『ギャーギャーとうるさい女が…』止まりである。これは女性VS男性の二項対立をその根底に抱える男性諸氏(特に『口うるさい女が…』などと発言するタイプに多いく、さらにそういう人にはエディプス傾向が顕著であると思います)にとっても、安易にフェミニズムを標榜する方々(こちらは男性だけでは無く女性についても)にとっても、『脇がガラ空きじゃねぇかよ(笑)』と言う状況です。
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 え〜(まぁ、その〜。と続けると今回のお題に対して強烈にフィットしたサマリーの書き出しになるのですが・笑)、こんな事書き出したのは『九州大学の工学部物質化学工学科に行って、もっとすごい生理用ナプキンを開発するのだ』と意気込んでいた同級生が高校のときにいたのを思い出したからです。