Lesson#152;野菜炒めにニラは入れてくれるな。

 仕事なんてしたくないのであ〜る。出来ることならこのまま遊んで暮らしたい、死ぬまで。と言うのが本音でありましょう、多くの就活中の大学生にとって。カネなんかもらえなくてもやりたい、やらなきゃ、などと言うものを見つけるなんて事は大変難しい。もしかすると不可能かもしれない。そんな中何とか折り合いをつけながら生きていかなきゃならぬ、と言うのがフツーです。ああ、やだなぁ。なんだか気が重くなるばっかり。
中途半端な志♪中途半端な危機意識♪中途半端な…となんだかテスト勉強も手につかなくなってきたのでライムでも、となんとティポグラフィカをバックトラックにへな猪口ラップで今の気持ちを吐露していたらもう7時です。風呂にでも入ってリフレッシュしましょう。
辛い思いを何もせずに貴族のように暮らすというのは、ウフフウフフと薄ら笑いを浮かべながら妄想するだけの夢なのですが、そんな暇があれば努力をしなければならないのが現実であります。一月ウン十万もするようなフラットに住む単身者、良い服、上手い食事、ホームパーティー…なんと言うものが悲しいかな、一部の人間にしか許されたものでしかなく、ヘラヘラ過ごしているような僕には一生やってこないであろう、と悲観する前に前進あるのみです。


ビルディングの壁材として使われる石。この天然鉱物の塊に、一朝一夕では起こりえない表面の劣化侵食がかえって、(きっと質量は減少しているだろうに)何かを付与している。物理的な変化なのだが、それは霊的なものであるとも言えるし、あるいは結局僕の錯覚なのかもしれない。手を触れるわけでは無く、目からじんじんと脳みその底の方までやってくる重苦しい感触。空気感は肺胞の一つ一つがカビで満たされそうなほど湿り気を帯びている(実際は冬なのでそんなに湿度は高くないのだが)。
それに比べ歩道のモルタルはひんやりとしており、その存在は清涼感すら漂わせる。冬の空気にさらされているからなのだろうか?しゃがんで皮の手袋越しに触るだけで、しっとりとして少しつめたい、女性の手のような優しさを味わえる。思わず頬が緩んでしまう。冬の朝、道端でしゃがみこんで微笑している人など見つけたら、ぎょっとしてしまうだろう、いつもの僕など特に。
まだまだ街が目の覚める時間ではないのでこの通りに人はいない。
『何か悲しいの?』
と、問われて初めて自分の頬をつたう涙に気付く。
そんなことよりも、である。この問いかけの主は誰なのか?顔を上げると赤いダッフルコートを着ている少女。7、8歳ぐらいだろう。フードもキチンと頭に被っている。彼女の眼を見ていたら(余談だが彼女の黒目は緑がかった黒だった)右手の袖を引っ張られた。黒ブチのある白いパグが僕の袖口のファーをくわえている。