Lesson#56;そっちの方がセンスがあると思うんですよぉ、コンビにより

生協で買った清涼菓子が抗癌剤と同じ名前だ、と言うのに気が付き『同じ過ちを繰り返すのは、以前失敗した状況を能動的に作り出し、今度こそは上手くやってやろう、と言う心理が働くからだ』と言う心理分析の一端を思い出してしまいました。きっと世界で一番気持ちの悪くなる薬の一種であるあの薬は『良薬口に苦し』どころではなく『良薬体に辛し』であります。その上“良薬”というのもイマイチぴんと来ないといった感じで。
そんなものと同じ名前を冠された物が、それとは対極にある“清涼”、しかも“菓子”、ですからね。幼少期は何処の家庭でも『お菓子ばかりは食べさせて。本当におじいちゃんは○△ちゃんには甘いんだから。虫歯にでもなったらどうするんですか!』と言う、いかにもお菓子が体に悪いものであるかの様なやり取りが繰り広げられていたことでしょう。健康のための苦いどころか身体的(と多くの人にとっては精神的にも)辛い薬、と不健康を招く甘美なお菓子という相反するものが同じ名前であると言うのは僕の個人史的には大変興味深い事実であります。
運命論的に解釈すれば、さわやかな高原の風と、どぶ川の吐き気を催すような臭気、の均衡を僕に示唆していますね。僕は昔から清涼菓子のハードユーザーでした。父の影響もあるのですが、フリスクとかをガバガバ食ってましたからね。余りにちょくちょく食べていたから、高校時代は隣の席の女の子(すごく可愛らしい方でしたが名前を失念)に『二宮君(苗字に君付けで女の子に呼びかけられる、って言うのは意外に素敵ですね。誰か呼んでくれないかしら?今風に言うと“激萌え”です・笑)お腹すいているの?』と聞かれるほどでした。
んで、二十歳になったかと思うと癌(と言っても悪性の腫瘍ですが)告知→手術(睾丸が一つになる、って言うもうサン・ラみたいな感じです・笑)→抗癌剤治療。今まで食べ続けたミントタブレットが与えた清涼感の清算、とでも言える様な吐き気、だるさ、(不特定多数への)殺意を経験した訳です。
今でもフリスクなんかの類は手放せないのですが、このままだとまた抗癌剤治療を受ける羽目になるのではないか?と言う不安で神経症になりそうです(まだこんなこと言ってゲラゲラ笑っていられるからいいけど)。
たまには癌の話もしないと、自分が健康に気を使わなければ結構ヤバめな人間であることを忘れてしまうので、今日はそんな日記です。忘備録って感じですね。死にいたる病。
なんにせよ、僕っていろんなことをほどほどに体験してきた人間なのですね。ほどほどの海外体験(ドイツに一ヶ月滞在。学んだことで一番印象に残っているのはドイツ語でもなくインターンシップ先の土木のことでもなく、愛でした・笑)だとか、ほどほどの闘病(世の中には抗癌剤治療がもう五回目だ、僕とそんなに年は変わらないのに、白血病で。なんて人もいらっしゃるんですからね。僕なんてほどほどです。この前聞いた話だと、四歳くらいであの治療を体験したにもかかわらず、お亡くなりになるような人もいらっしゃいます。健康な若人は生を、そして性を謳歌してくださいねぇ〜、今すぐに!)だとか、ほどほどのリーダーシップ(高校時代、部長だったんですよ、こう見えて・笑)だとか。どれもがほどほど過ぎて就活のネタにならないのが目下の悩みですが。
そんな僕はいまマルタ・アルゲリッチが1965年にレコーディングしたショパンピアノ曲集を聞いています。これ病気になる前に買ったんですが今になってその素晴らしさがわかる、と言う状況に少しは抗癌剤をありがたく思うわけです。打鍵、というニュアンスが強く伝わるすごくいい演奏ですね〜。

Chopin: Piano Works: Martha Argerich The LEGENDARY 1965 RECORDING

Chopin: Piano Works: Martha Argerich The LEGENDARY 1965 RECORDING