ウィントン・マルサリスとアップルはどうするつもりなのでしょうか?どのチャンネルをつけても例のCMが流れているような印象を受けます。ここ三十分で二、三度見ましたよ。iTunes限定なんていう触れ込みですが、絶対後々CD出るぜ。『ネット配信限定だったあの曲が日本限定でボーナストラックに』って言う感じで。だって日本はまだまだネット盲(文盲みたいな感じ)の人が沢山居る(と思う)んですよ。だからこそNet限定という言葉が意味性を得るんですけど。Appleはこれを足懸りにiPodiTunesのユーザーを増やそうとしてるんでしょうね。僕はメディア論、経済については明るくないので、安易に予想なんてするのはおこがましいのですが、ちょっときつい気がします。ワールドワイドな(もしくはアメリカの対日本)戦略ですから言語の壁を越えうるJazzに力を借りたんでしょうけどここで起きるであろう現象は
・ オーディオマニアの中高年が、一応PCは使えてiPodくらいは余裕で買える、且つウィントンは好き。いままで『音質がさぁ…』とか言ってこういった機器は導入を躊躇っていた(酷い人は嫌っていた)→多分買う
・ 結婚三年目、共働きで家計は旦那の稼ぎでどうにかなる。PCは仕事と株取引に使うだけで、なんかファッショナブルな曲がかかってるなぁ、という29歳の女性→間違いなく買う。
・ 元からJazz好きで、金があればDiscを買うのに使ってしまい、今までにiPodは買えず(ちょっと欲しい)。ウィントンなんて白人の犬だろ!とか思ってる21歳大学生→買わない、絶対。
最後のケースは若干私的なものが混じっていますが、曲は完璧ですね。ファッショナブルだと思うし、ポップだとも思います。Jazzを僕みたいな中途半端な音楽好きが、そのシーンの外から俯瞰すると『もうビバップは古い、フュージョンも過去のものである』と思うわけ。だとすると、今世紀的なJazzって言うのがいまだ創成期にあって、そういった時代にこういう作品が生まれたのには大きな意味があったと思います(ポップミュージックはマスに消費されることが大前提ですからね。その大小は関係なく)。これがどれだけのヒットになるかも大きな意味が出て来るのでしょうが、まぁ先の事はまだまだわかりませんので。やっぱり国策の一環としてJazzをやってるような人なので、すごいのが出来ても何ら不思議は無いんですけどね。
とりあえず、仕事上仕方なくPCを使っている40代後半の父を持つ娘さん、もしくは株取引でPCを使う50代前半の母を持つ息子さん、今年の母の日、父の日のプレゼントはiPodで決まり、でしょう。オーヴァー40が“チョイワ○”とかに付与する音楽としてこういったものが丁度いいでしょう。実は初期のビ・バップは10代、20代の創生した音楽なんで、全然“大人”では無いんです。Jazzのルーツの一つであるブルース、の巨人ロバート・ジョンソンですら三十代を前にして死んでるんですからね。なおかつそれをやってたのは戦争にも行かないろくでなしですし。むしろパンク(というアティチュード)との親和性が強い、と思っています。
その点、ウィントン氏は45歳ですから。しかも学歴とかも申し分ない。
自分が使ったことも、まして好感すら持ってないものを人に勧める。広告代理店とかに勤めたらすごくいい成績を収めそうだ、僕(今遊びでやってるから良いけど、仕事になったら絶対逃げ出しそう・笑)。