Lesson#234;誰かの為に誂られた社会と、そこに生きるそれ以外の人々

 たくさんの人が、ひところ、ひとときに傷つけられ、命を奪われる。
 彼にとっての痛みとはなんだったのでしょうか?
 つらい毎日とはなんだったのでしょうか?
 今日もどこかで幸せな生活が営まれています。
 黙っていても、突然命の火が消えることは、普通のことです。
 僕はこの前、中学二年のとき、部活の九州大会で行った沖縄を思い出しました。
 吹奏楽部だったので男子は少なく、先輩後輩含め全部で10人でした。
 そのうち二人が、もうこの世にいません。
 一人は事故で。
 一人は病気で。
 若くして亡くなった彼らは今、僕に生きるていることを強烈に突きつけています。
 ものすごい痛み。
 耐えられない辛さ。
 理解しあえない悲しみ。
 そして憂鬱。
 たくさんの人生における罠。
 真っ白な地平にぽっかりと開く穴。
 明晰な人々はそれを避けることが出来る。
 歩幅の広い人はそれを跨いで行く。
 そうやってみんなそれぞれの目的地へ向け歩いていく。
 底が見えないほどの深い穴に落ちる人。
 踝ほどの深さの穴に躓き、膝を付く人。
 誰もが顧みない。
 それでも明日が彼らに訪れること。
 穴底の暗闇。
 すぐ横を足早に通り過ぎていく人々の蔑視、嘲笑。
 お互いについては実のところ、何も知らない。
 どんなに近しい人同士でも。
 況や彼について考えるサイコロジストも。
 暴力がさぁっと、街中に風のように過ぎ去って。
 消えたものへの、行き所を失った愛。
 大量の涙でも潤しきれない乾いた土。
 残された目撃者、記憶、体験、事実、憎悪、悲哀、空虚。
 おまえはくそったれだよ。
 おまえはほんとうにくそったれだ。